その嘘に踊れ

唇がこんなに震えているのに、声を震わせなかった自分を褒めてやりたい。

爪が掌に食い込んで血が滲むほど拳を握りしめ、アオは項垂れた。

アイマスクで目隠しされた透子が、声だけを頼りにコチラを向く。

さぁ、責めて。
咎めて。
罵って。

『アオ』に、トドメを…


「そう。
じゃ、今のも全部嘘なンだ」


「っ」


予想だにしなかった透子の反応に、アオは言葉を詰まらせた。

だが、ココで動揺を悟られてはならない。

額に大きな手を当て、アオは無理矢理口角を上げて嘲笑を漏らす。


「ハ…ハハっ
おまえ、ドコまで頭湧いてンだ」


「今、アオは、おでこを押さえて笑ってる」


(うっそ!?ナニソレ!?
見えてンの!?)


またも予想だにしなかった反応…というより、透視能力でも持っているかのような透子の指摘に、アオは驚きの声をグっと飲み込んだ。

ついでに慌てて額から手を離し、誤魔化しがてら頭を掻いてみたりする。

カッコ悪すぎる。

てか、アイマスクの意味なさすぎる。


「アオは作り笑いがヘタだと思う」


覆われて見えないはずの目を真っ直ぐアオに向け、透子は話し始めた。

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