その嘘に踊れ
「だから作り笑いをする時はいつも、顔の大部分を手で覆って隠してる。
無意識なのか、意図的なのかはわからないケド」
「…」
「嘘をつくのだって、ヘタだと思う。
アオがついた嘘って、嘘って言うよりほぼネタだったし」
「…
殺されたくないのなら、もう黙れ」
低い声で唸ったアオは、淡々と語る透子の細い首に手をかけた。
ほんの少し指先に力を込めて。
だが言動とは裏腹に、目を潤ませて。
アオは祈る。
お願いだから、これ以上…
「嘘がヘタな嘘つきアオ。
そんな力じゃ、人の首は絞められないよ。
どうして嘘をつき続けるの?
どうして本当のコトを言わないの?」
言えないからだよ。
なのに、見透かされる。
アイマスクで封じたはずの二つの大きな黒水晶が、心の奥深くに沈めた真実を暴き出す…
(もう、無理だ)
アオはバンのスライドドアを叩きつけるように開けた。
そして、透子の首から手を滑らせてセーラーの襟を掴み、乱暴に車外に放り出す。
声もなくアスファルトに転がった透子の顔からアイマスクが外れるのを確認して、アオは運転席に乗り込んだ。
スクールバッグをサイドウインドウから投げ落とし、エンジンを吹かして走り出せば…
彼女との繋がりは、消える。