その嘘に踊れ
名前は『芦原透子』。
17才の日本人女性。
現住所と、在学中の名門女子校名。
それから、一枚の写真。
それがアイツらから与えられた、情報の全てだった。
でも、一目であの時の天使だって。
俺のシズクだって、気づいたよ。
だって君は俺が妄想レベルで胸に描いていた通りの、清らかで美しい少女になっていたから。
クライアントの要望は『密かな抹殺』だった。
日本は治安が良く、犯罪発生率の低い国だ。
一介の女子高生が少しでも不自然なカタチで死を遂げれば、大々的に報道されて知れ渡ってしまう。
だから誘惑し、穏便に人目のない場所に連れ出して殺すコトをお望みで。
そして死体を隠蔽し、単なる失踪に見せかけるコトをお望みで…
ハイ、無理。
声を大にして言おう。
無─────理─────!!
天使殺しとか、ソレなんて冒涜?
だが、俺に命令が下ったのは幸運だった。
シズクを守ろう。
アイツらを出し抜き、クライアントを割り出して逆に始末し、シズクを守ろう。
わかってる。
俺は裏切り者として処刑される。
でも、それでいいンだ。
多くの罪を犯しながら、それでも生にしがみついてきたのは、全てこのためだったンだ。
恋した天使に命を捧げる。
なんて人間らしい最期だろう。
きっとそれが、俺が存在する意味なンだ。
いつも通り、大人しく従うフリをして。
連絡役の『Unnamed Children』を一人連れて。
俺は天使が住まう国、日本にやって来た。