その嘘に踊れ


守りは意外と手薄だった。

見回り役も数組いたが、特に警戒する様子もなく『小娘』の噂をしながら歩いているだけだった。

ターゲットを首尾よく確保してクライアントを待つだけとなり、気が緩んでいるのだろうか。

大きな建物の右側にある事務所らしい一室には明かりが灯っていたが、他は真っ暗。

外と同様、ガラクタが山積みになった倉庫内は静まり返っていた。

まぁ、ココでゆっくりする気にはなれねェわな。
雑然としすぎてるもんな。

天井近い高さに、グルリと壁に沿って設けられたキャットウォークにまで、よくわからないモノが所狭しと置かれてるもんな。

捕らえられたシズクも、アイツらと一緒に事務所にいるのだろうか…

様子を窺っていた扉の陰から出て、倉庫の中央、モノに囲まれているものの多少開けたスペースで辺りを見回したアオは、手の中にある銃のグリップを握ってその感触を確かめた。

ベレッタM9。
米軍でも使用されている、実用性の高いハンドガンだ。

だけど…

今は正直、コレだけでは心許ない。

予備のマガジンもそんなにないしなー。
独自に調達してバンに積んであった他の武器を、持って来ときゃよかったなー。

盛大に失敗しちゃったケド、コレはしょーがないよネ!?

颯爽とコンニチハして、颯爽と『Bomb!』する予定だったからネ!?

アイツらとの戦闘なんて、完全に想定外だからネ─────!!??

でもまぁ、こんなトコで尻込みしてる場合じゃないワケで。


(まずはシズクを見つけなきゃ)


唇を引き結んだアオが、足を踏み出した時…

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