その嘘に踊れ
ハイ、ハイ。
今更そーゆーの、イイから。
どうせ最終的にブっ殺しちゃう気だったのは、言われなくても知ってたからー
「放せ!チクショー!放せっ!!
誰か!撃て!
もうこのガキを撃っちまえ!!!」
あららー
イイの?
ソレ、ほんとにイイのぉぉぉ?
ちょっと血圧が心配になるほどの怒り。
それと、ガッツリ圧迫された頸動脈。
二つの理由で顔を真っ赤…いや、ドス黒く染めて、アイツが口汚く喚く。
『撃て』はブラフだ。
デリンジャーは、人差し指で銃身を支え、トリガーには中指をスタンバイさせるという特殊な持ち方をするほどの超小型掌サイズ拳銃。
武器だけを撃ってターゲットを丸腰にする、なんて芸当は到底ムリ。
かと言って、これだけ人質に密着したターゲットに向けて発砲するのもムリ。
ブリーフ派スナイパー並みの腕がなければ、ターゲットを貫通した弾で人質まで死亡ENDとなる可能性が高い。
リアルはシビアだね。
人質取った立てこもり事件の解決に、長時間を要するのがよくわかる。
でもね?
『撃て』の連呼に触発された勘違い勇者が、『ヤってやンよ!』なんてその気になっても困るからね?
(コッチもブラフだ)
デリンジャーを持つ手を素早く下に向けたアオは…
ガァン
革靴を履いたアイツの足の甲を撃ち抜いた。