その嘘に踊れ
ギャァァァァァ…
なんてアイツの汚い悲鳴が高い天井に反響した時にはもう、デリンジャーはまた元の位置。
「痛ェェェェェ!!
撃ちやがったなぁぁぁぁぁ!?」
「あぁ。
黙れ」
「殺してやる!絶対ェ殺してやるぅぅぅ!!」
「あ、そう。
もう黙れ」
「おまえ、バカじゃねェのか!?
ナニ余裕かましてやがンだ!?
もう残弾一発だろうが!?」
「一発あれば、おまえを永遠に黙らせられる。
試してみるか?」
「ぐ… ぅぅ…」
顔を顰めてアイツが唸り、居並ぶ面々には動揺が走る。
組織は所謂軍隊方式。
上官が号令を出さなければ、部下は動けない。
これで膠着状態は作り出せた。
(後は…
なんとかこのまま、クライアントが到着するまでの時間を稼げれば…)
アオのポーカーフェイスを、一粒の汗が滑り落ちた時…
「もう!
非常事態だってのに、ナニやってンだよ!」
「なんで誰も応答しないンだ!?」
飛び込んできた数人の男たちがこぼす苛立ち丸出しの愚痴に、倉庫内の沈黙は破られた。