その嘘に踊れ

ギャァァァァァ…

なんてアイツの汚い悲鳴が高い天井に反響した時にはもう、デリンジャーはまた元の位置。


「痛ェェェェェ!!
撃ちやがったなぁぁぁぁぁ!?」


「あぁ。
黙れ」


「殺してやる!絶対ェ殺してやるぅぅぅ!!」


「あ、そう。
もう黙れ」


「おまえ、バカじゃねェのか!?
ナニ余裕かましてやがンだ!?
もう残弾一発だろうが!?」


「一発あれば、おまえを永遠に黙らせられる。
試してみるか?」


「ぐ… ぅぅ…」


顔を顰めてアイツが唸り、居並ぶ面々には動揺が走る。

組織は所謂軍隊方式。
上官が号令を出さなければ、部下は動けない。

これで膠着状態は作り出せた。


(後は…
なんとかこのまま、クライアントが到着するまでの時間を稼げれば…)


アオのポーカーフェイスを、一粒の汗が滑り落ちた時…


「もう!
非常事態だってのに、ナニやってンだよ!」


「なんで誰も応答しないンだ!?」


飛び込んできた数人の男たちがこぼす苛立ち丸出しの愚痴に、倉庫内の沈黙は破られた。

< 181 / 291 >

この作品をシェア

pagetop