その嘘に踊れ
ひょっとして、何回も連絡くれてた?
ゴメンね?
コッチも手が離せなくてさ。
外の非常事態を報告しようとやって来た男たちは、中の非常事態に気づいて足を止めた。
そしてジャケットの中のショルダーホルスターに手を伸ばしながらも、アオに拘束されたアイツをチラチラと伺い見る。
うん。
やっぱ指示待ち。
それに対し、適切な指示を出さなければいけないハズの上官サマは…
「なんだ!?
クライアントが来たのか!?」
一刻も早く解放されたいがために、クライアント待ち状態で喚いた。
すると、ナニを報告しにやって来たのか思い出した男たちも、負けじと口々に喚き出す。
「変な車が一台入ってきたンです!」
「大音量でよくわからない音楽を鳴らして!」
「しかも暴走ぎみで!」
「制止しようとしたヤツらが数人、撥ねられました!」
「応戦してもよろしいでしょうか!?」
「はぁ!?
応戦してどうする!?
クライアントかどうか、まずは確認を」
最後の声は…
クライアントの到着を待ちわびる、アイツの台詞。
途切れてしまった理由は…
例の『大音量のよくわからない音楽』が、倉庫内にも聞こえてきたから。