その嘘に踊れ
いやいや。
そーじゃねェだろ。
だって彼らは…
いやいやいや。
思い出してみろ。
そう言えば彼らは…
いやいやいやいや。
ちょ…待っ…えぇぇ???
落ち着いて考えたいケド、状況がそれを許さない。
ますます迫る大音量。
サビに向かって盛り上がる曲。
そこに混じる、『わー』とか『ぎゃー』とか…
おそらく外にいるヤツらの悲鳴。
そしてとうとう…
ドゴーン!!
男たちを撥ね飛ばして、鉄製の扉を薙ぎ倒して、暴走車は倉庫内に乱入してきた。
しかも、まだ止まる気はないみたい!?
「「嘘ぉぉぉぉぉん!!??」」
アオは慌ててアイツを放り出して右側へ、放り出されたアイツも慌てて左側へ、『轢くゾ、コラ』とばかりに突っ込んできた黒いワゴン車から飛び退いた。
もう間違いない。
コレは昼間見た、緑の髪をツインテにしてインカムつけた女のコを、デカデカと塗装した痛車だ。
ブレーキもかけず、痛車はそのまま倉庫の壁に激突する。
その衝撃でリアハッチが開き、剥き出しになったトランクオーディオからは…
千本桜 夜ニ紛レ
君ノ声モ届カナイヨ
もう、ね。
ちょっとしたライブ会場並の音量デスヨ。
いいウーハー積んでやがンな、チクショー。