その嘘に踊れ

身軽にドラム缶を乗り越えて。
器用に鉄筋の上を走って。

アオは進む。

目指すのは、倉庫の天井付近に張り巡らされたキャットウォーク。

その、壁に激突した痛車のちょうど真上辺り。

ソコにいる『誰か』は、明らかにアオを待っていた。

だって降り続けるマシンガンの雨は、相変わらずアオを避けていたから。
進行を妨げたりはしなかったから。

誰なの?
誰なの?

君は、誰なの…?

細い手摺りを握って、置かれたガラクタでさらに細くなったキャットウォークによじ登ったアオは、縞鋼板で築かれたバリケードの前に立った。

コレもね、巧みだと思うわ。

鉄板の重ね方をちょっと工夫すれば、隙間から外は見え放題だし、撃ち放題だし。
言うまでもなく強度は抜群だし。

ソレよりナニより、不自然さのカケラもなくガラクタに紛れてるし。

こんなトコロに人が隠れてるなんて、誰も気づかなかったからネ!?

さぁ、凄腕の『誰か』サン。

顔を見せてもらおうか?

明かり取りの窓枠に足をかけ、バリケードの中を覗き込んだアオは…


「…


なんで?」


目を点にしてポツリと呟いた。

ソコにいたのは、片膝を立てて胡座をかき、スナイパーライフルを構える小柄な少女。

白いセーラー服、艶やかな黒髪、黒水晶の瞳の…

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