その嘘に踊れ

いつだって冷静で、聡明で、洞察力に優れた彼女。

だがそれを隠すように…
いや、存在自体を背景の中に隠すすべを知っているかのように、目立たない彼女。

これくらいなら、『地味で平凡な女子高生』でも通る。

だが…

麻酔を打たれているにも関わらず、ランニングマンできて。

簡単に手錠抜けできて。

ボカロ好きなQと知り合いで。

爆薬や銃の知識があって。
それどころか、その扱いに精通していて。

誰一人気づけないほど速く静かに、それでいて大胆な凶行をこなす『凄腕』で…

もう、ね。
コレが『地味で平凡な女子高生』なら、世の中狂ってる。

彼女はいったいナンナノ?

俺に名を与え、人としての命を吹き込んだ天使は…

今すぐ聞きたかった。
彼女を知りたかった。

でも、聞けなかった。


「アオ、11時の方向」


と、彼女がいつも通りの冷静な口調で言ったから。

反射的に目をやれば、外から倉庫内に駆け込んできた一人の男。

その手には、マクミランTAC-50。

ドコ目掛けて撃つ気なのかは知らないが、アンチマテリアルライフルはマズいでショ。

シグブレイザーを構え直したアオは、すぐさまその男に向けて発砲した。

どーもスンマセンね。
銃身やら弾丸やらをピンポイントで撃つ、変態的な腕はないモンでね。

< 195 / 291 >

この作品をシェア

pagetop