その嘘に踊れ
いつだって冷静で、聡明で、洞察力に優れた彼女。
だがそれを隠すように…
いや、存在自体を背景の中に隠すすべを知っているかのように、目立たない彼女。
これくらいなら、『地味で平凡な女子高生』でも通る。
だが…
麻酔を打たれているにも関わらず、ランニングマンできて。
簡単に手錠抜けできて。
ボカロ好きなQと知り合いで。
爆薬や銃の知識があって。
それどころか、その扱いに精通していて。
誰一人気づけないほど速く静かに、それでいて大胆な凶行をこなす『凄腕』で…
もう、ね。
コレが『地味で平凡な女子高生』なら、世の中狂ってる。
彼女はいったいナンナノ?
俺に名を与え、人としての命を吹き込んだ天使は…
今すぐ聞きたかった。
彼女を知りたかった。
でも、聞けなかった。
「アオ、11時の方向」
と、彼女がいつも通りの冷静な口調で言ったから。
反射的に目をやれば、外から倉庫内に駆け込んできた一人の男。
その手には、マクミランTAC-50。
ドコ目掛けて撃つ気なのかは知らないが、アンチマテリアルライフルはマズいでショ。
シグブレイザーを構え直したアオは、すぐさまその男に向けて発砲した。
どーもスンマセンね。
銃身やら弾丸やらをピンポイントで撃つ、変態的な腕はないモンでね。