その嘘に踊れ
「軽トラ」
そう答えたシズクが、いつの間にか持っていたフックをチョイチョイと振ってアオを手招いた。
シグブレイザーを脇に置いて彼女の隣に立ち、窓から外を見下ろせば…
ドラム缶を吹っ飛ばし、コンクリートブロックの山を踏み越えて、コチラに向かって走ってくる白い軽トラック。
農作業用具を積んだまま畑の傍に駐車してあるビジュアルそのままなのに、ボディもタイヤも装甲仕様デスカ。
ソーデスカ。
その猛牛の如き爆走スタイル、見覚えあるわー
てか、見覚えしかないわー
ほんとに心当たっちゃいましたYO!
「ココはもうイイから。
コレで下りて、あの荷台に乗って」
シズクはアオの浅黒い手を取り、窓枠の上部に固定したアンカーランチャーから伸びるワイヤーにかけたフックを握らせた。
カンカンと、下からの激しい銃撃を弾き始めた縞鋼板。
その隙間から見えるのは、マシンガンの雨を避けてガラクタを登る、生き残った男たち。
そしてその中には、誰かの肩を借りてコチラを睨みつけるアイツの姿も…
なるほど。
タイムオーバーだ。
「わかった、行こう」
鋭い視線を倉庫内に送ってから、片手でフックを握り直したアオは…
「大人しくしててね?」
「へ?」
余った腕をシズクの細い腰に巻きつけ、ヒョイと抱え上げた。