その嘘に踊れ

あぁ、もぅ…

『平凡』だなんて、よく言うよ。

この透き通る黒水晶に見つめられると、人の瞳を見続けていると気が狂う、なんて話を信じてしまいそうになる。

見透かさないで。
暴かないで。

君は何一つ知ることなくココにいて、いつか、何一つ知らないまま元の生活に戻るべきなンだから。


「アハハっ 鋭いネー。
他にもしーちゃんのヒミツを聞き出そうとしたケド、失敗しちゃったー」


アオは大きな手を額に当てて、大袈裟に笑った。

それから、そのまま前髪を掻き上げ、悪戯っぽく片目を閉じる。


「俺が君を拐ったのは、君を守るためだ。
名前を言っちゃいけないあの人が復活して、マグル殲滅大作戦を」


「額に傷はないようですが」


「ハハハ、その調子!
俺に心を許さないでネ?
俺は嘘つきなンだから」


アオは笑いながら立ち上がり、透子に背を向けてドアに向かう。

だから、僅かに眉を寄せて首を傾げる透子に気づけなかった。

彼女がココに連れてこられて二度目に見せた感情は、戸惑い。


『嘘つきが言いました

私は嘘つきです、と
心を許さないで、と

さて、嘘つきのパラドックスが発生したようです

果たしてその嘘は、嘘でしょうか?

それとも真実なのでしょうか?』

< 20 / 291 >

この作品をシェア

pagetop