その嘘に踊れ
あぁ、もぅ…
『平凡』だなんて、よく言うよ。
この透き通る黒水晶に見つめられると、人の瞳を見続けていると気が狂う、なんて話を信じてしまいそうになる。
見透かさないで。
暴かないで。
君は何一つ知ることなくココにいて、いつか、何一つ知らないまま元の生活に戻るべきなンだから。
「アハハっ 鋭いネー。
他にもしーちゃんのヒミツを聞き出そうとしたケド、失敗しちゃったー」
アオは大きな手を額に当てて、大袈裟に笑った。
それから、そのまま前髪を掻き上げ、悪戯っぽく片目を閉じる。
「俺が君を拐ったのは、君を守るためだ。
名前を言っちゃいけないあの人が復活して、マグル殲滅大作戦を」
「額に傷はないようですが」
「ハハハ、その調子!
俺に心を許さないでネ?
俺は嘘つきなンだから」
アオは笑いながら立ち上がり、透子に背を向けてドアに向かう。
だから、僅かに眉を寄せて首を傾げる透子に気づけなかった。
彼女がココに連れてこられて二度目に見せた感情は、戸惑い。
『嘘つきが言いました
私は嘘つきです、と
心を許さないで、と
さて、嘘つきのパラドックスが発生したようです
果たしてその嘘は、嘘でしょうか?
それとも真実なのでしょうか?』