その嘘に踊れ

いやいや…
撃たれてこの程度のケガとかねェよ。


「撃たれてない。
てか、倉庫の中でもない」


「じゃ、いつなの!?
しーちゃんにこんな大ケガさせたバカは誰なのぉぉぉ!?」


いやいやいや…
大ケガの定義がオカシィよ。

てかコレ、犯人のバカは…


「アオがバンから私を落とした時。
転んで擦りむいた」


「まさかの俺ェェェェェ!!??」


そう、おまえだよ。

ごめんネ!?痛かったよネ!?ごめんネ!?すぐに治したげるから!!ちちんぷいぷい─────!?

さらに青くなり、さらに涙目になったアオが、妙な呪文を唱えるが…

だーから、そんなんで治りゃ世話ねェって。

取り乱しすぎて魔法使いと化したアオを、シズクは見つめる。

その黒水晶の色は、いつものように思慮深く穏やかではなかった。

むしろ困惑に揺れていた。

それに気づいてさらに不安になったアオが、半ベソかいて訊ねようと…


「シズク!アオくん!
二人ともケガはない!?」


ハイ、無理デシター

軽トラのサイドウィンドウから顔を出したデイジーが、太い声で叫んだから。

…ん?

なんか違和感…

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