その嘘に踊れ
「ヤっだぁ、勘違いしないで?」
と、帰宅したまま黒服姿のデイジーくん。
ナニ?
ナニが勘違いなの?
「『ならず者の夢』みたいなってか、『ならず者の夢』なのよぉ。
アタシたちが組織から足抜けした事実が噂になって、そう呼ばれるようになったンだもの」
「そーだ、リア充死ね」
絶妙な合いの手を入れたのは、同じく帰宅したまま黒服姿のオタくん。
なんでいきなりディスられてンの?
てか、なんでいっつもディスられてンの?
「シズクはあの頃『r09u-E』だったの。
ソレをちょいちょいっとイジったら…」
「『rogue』だ、リア充爆ぜろ」
「そう!
『ならず者』でショ?
ちなみに噂を吹聴したのはア・タ・シ♪
世界中の『Unnamed Children』に、希望を失わずにいてほしくて、ね」
「わかったか、リア充もげろ」
だーから…
理不尽にディスりすぎじゃね?
でも、ご親切に、どーも。
おかげでよくわかったよ。
絶対に手が届かないと諦めていた夢を紡いだ人が、絶対に手が届かないと諦めていた天使だったってコトが。
デイジー、ナニも語らずその隣に腰を下ろす『このコ』、そしてオタを、髪から手を離して見回したアオは…
黒いカットソーの袖をまくってテーブルに頬杖をつき、深い溜め息を吐きながらブラックコーヒーが入ったマグカップを取った。