その嘘に踊れ
『ただただ嫌い』って…
余計気になるわ。
俺、ほんとアイツになんかしたっけ?
アオの疑問を見透かしたように、デイジーが眉尻を下げて言う。
「しょうがないわ。
オタはシズクが好きなの。
だからシズクにとって特別なアンタが、どこまでも気に入らないの」
ナンダッテ?
「オタだけじゃないわ。
仲間のほとんどがシズクの狂信的なファンだから、ライバルは多いわよぉ」
ナンダッテェェェェェ!!??
いやいや…
そりゃそーだろーとは思ってましたヨ?
ぐうかわだもん。
まじ天使だもん。
そりゃ、彼女に恋する男は多いだろうと思ってましたヨ?
でも、そんなに?
星の数レベル?
この戦い、果たして生き残れるか…
「まぁ… 傾倒せずにはいられないわよ。
あの、全てを捩じ伏せる圧倒的な存在には」
「…は?」
今まで掻い潜ってきた修羅場よりも低そうな生存率に絶望していたアオだったが、ひとりごとのようなデイジーの呟きを聞いて、俯けていた顔を上げた。
続く呟きは、こう。
「残虐性が宿るクラシカルな美しさ…
虫も殺せそうにない華奢な手が、無造作に屍の山を築いて血に染まっていく光景には…アタシだってゾクゾクしたもの…」