その嘘に踊れ

今ココにはないナニカを遠く夢見るような、ヘーゼルの瞳。

眉根を寄せてソレをひと睨みして…


「シズクに血は似合わない」


と、短く言い切ったアオが、音もなく立ち上がって踵を返す。

向かう先は、オタと同じく玄関ドア。


「待って、待って、ドコ行くの!」


部屋を出ようとするアオの背中に、デイジーは慌てて手を伸ばした。

それでもアオは、足を止めない。


「…」


「あー、ハイハイ、シズクのトコロね?
でもあのコ、もうアンタの部屋にはいないと思うわよ?」


「…」


「ちょ… 殺気噴出してンじゃないわよ。
アタシたちが隠したワケじゃないから。
言ったでショ?
シズクは閉塞感のある狭い空間がキライなの。
きっと、ずっとケージに閉じ込められていた幼少期の反動だわね」


「…なら、彼女はドコだ?」


「もちろん教えるケド。
その前に、ちょっと確認してイイかしら?」


レバータイプのドアノブに手をかけて、やっとアオが振り返る。

彼のアイスブルーに映ったデイジーは…

もう憧れに目を潤ませてはいなかった。
グっと口角を持ち上げ、ニヤリと笑っていた。


「アンタ、アタシたちの仲間になるわよね?」

< 255 / 291 >

この作品をシェア

pagetop