その嘘に踊れ
今ココにはないナニカを遠く夢見るような、ヘーゼルの瞳。
眉根を寄せてソレをひと睨みして…
「シズクに血は似合わない」
と、短く言い切ったアオが、音もなく立ち上がって踵を返す。
向かう先は、オタと同じく玄関ドア。
「待って、待って、ドコ行くの!」
部屋を出ようとするアオの背中に、デイジーは慌てて手を伸ばした。
それでもアオは、足を止めない。
「…」
「あー、ハイハイ、シズクのトコロね?
でもあのコ、もうアンタの部屋にはいないと思うわよ?」
「…」
「ちょ… 殺気噴出してンじゃないわよ。
アタシたちが隠したワケじゃないから。
言ったでショ?
シズクは閉塞感のある狭い空間がキライなの。
きっと、ずっとケージに閉じ込められていた幼少期の反動だわね」
「…なら、彼女はドコだ?」
「もちろん教えるケド。
その前に、ちょっと確認してイイかしら?」
レバータイプのドアノブに手をかけて、やっとアオが振り返る。
彼のアイスブルーに映ったデイジーは…
もう憧れに目を潤ませてはいなかった。
グっと口角を持ち上げ、ニヤリと笑っていた。
「アンタ、アタシたちの仲間になるわよね?」