その嘘に踊れ
仲間…
自分たちを、そしてその他多くの『Unnamed Children』を解放するために戦う、彼らの仲間…
「アタシたちだって、人を殺すわ。
得た情報を売って、資金源にしたりもするわ。
でも、組織とは決定的に違う。
アタシたちはアタシたちの意思で、法や道徳に背いて生きてる。
アタシたちは自由なのよ」
自由なのは、わかる。
法で裁けない力には、法に縛られない力でしか立ち向かえないのも、痛いほどよくわかる。
綺麗事を超えた彼らなりの正義が、綺麗事を超えた自らの正義と、同質であることも…
わかってるンだよ?
頭では、ね?
でも…
「もし…
もし任務を受けてやって来たのが、俺以外の『Unnamed Children』で。
もしシズクが危険に晒される羽目になっていたとしたら。
おまえ、どうするつもりだったンだ?」
アオはデイジーの勧誘には応えず、全く違う問いを低い声で投げかけた。
一瞬、心底意外そうに目を見開いて、デイジーは逞しい肩を揺らして笑う。
「危険に晒される、ですって?
ナイナイ、あり得ないわぁ。
だってあのコはシズクなのよ?
たった一人でホワイトハウスを乗っ取って、たった一人で核を手に入れて、たった一人で第三次世界大戦を引き起こせる力を持った唯一の」
「違う。
シズクは普通の女のコで、俺の天使だ」
妄想じみた称賛を、バリトンボイスが遮って…
デイジーは再び、心底意外そうに目を見開いた。
ついでに、アノールは横を向いて吹き出した。