その嘘に踊れ

「おまえらには本当に感謝してる。
だが仲間になるって話は、ちょっと考えさせてくれ」


「イイわよぉ。
納得いくまでゆっくり考えて?
それと、シズクはきっと屋上よ」


夜明け前のまだ暗い空に銀の髪を靡かせ、開いたドアからアオが消える。


「聞いたぁ?今の。
あのシズクが、普通の女のコですって!
恋は盲目って本当なのねェ」


レバーハンドルが上がって完全にドアが閉まるのを確認してから、デイジーは恋バナのノリでキャっキャとアノールに話しかけた。


「アタシ!断然!応援しちゃう!
アオくんとシズクの、恋のキューピッドに立候補しちゃう♪♪♪」


コワい、コワい。

三つ並んだ『♪』がコワい。

マッチョでオネェのキューピッドは、もっとコワい。


「そんなコト言って…
オタやみんなに恨まれるわよ?」


あらら。
アノールさんは至って冷静デスネ。

身体を捻って後ろの棚にあったカティサークのボトルを取り、グラスにも注がず直に一口呷ってデイジーに手渡す。

ソレを受け取って…


「そうね。
でも、メリットが大きいから」


やはりボトルから直接琥珀色の液体を呷り、デイジーは唇を歪めて笑った。

あらら。
コッチも冷静デシタカ。

< 257 / 291 >

この作品をシェア

pagetop