その嘘に踊れ
やっぱこーでなきゃ。
街に視線を落としたままでも、お互いが微笑んでいるのがわかる。
だけど、油断大敵。
「アオ」
ほーら、出た。
天使のスキル、他心通。
首を回してアオを見上げたシズクの黒水晶が光った。
清らかな水のように、磨かれた硝子のように。
「どうしてアオは、暗殺対象になった私を守ろうとしたの?」
伝えたいコトはたくさんある。
告げたい言葉も、また。
でも…
多くを語らなくても、君ならコレだけでわかってしまうンだろう?
「シズクが、俺に名前をくれたから」
アオも首を回してシズクを見下ろし、アイスブルーを優しげに細めて言った。
額に手を当て、顔を隠したりはしなかった。
「シズクは?
どうして俺を組織から助けてくれたの?」
「アオが、私に名前をくれたから」
「一緒かぁ…
でもさ、それならそうと教えてくれればよかったのに」
「アオが、ヘタな嘘ばっかついて本当のコトを教えてくれなかったから」
「え?負けず嫌い発動しちゃったの?
その結果、俺が踊らされるハメになったの?」