その嘘に踊れ

まじかコイツ。
この期に及んでまたも拉致宣言か。

透き通る黒水晶が、大きく見開かれる。


「…そうくるとは思わなかった。
理由は?」


おや。
天使にも、見通せないコトもあるンだね。

理由は簡単。


「彼らと一緒にいると、シズクが危険だから」


片手を柵から離して身体ごとシズクに向き直り、低く、キッパリと、アオは言った。


「危険?」


「そう。
彼らはシズクのコトを、人類最強のパーカーサーかなんかだと勘違いしてる」


「あー…うん…うん?
そりゃグルグル回転してうなじを削いだり、鉄板レベルの大剣を振り回したりはしないケド、事実私は」


「ほら!シズクも!
周りの勘違いに毒されてる!
違うから!
君は普通の女のコで、俺の天使だから!」


「『普通』とはいったい…」


憤然と逆立つシルバーグレー。
困惑に揺れる漆黒。

二人の間には、『認識の違い』という深い溝がある。

まずはソレを埋めなきゃ、ね。


「『r09u-E』のコト、ナニも聞いてないの?」


顎に手を当て、小首を傾げながらシズクは訊ねた。

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