その嘘に踊れ
「聞きマシタ!
シズクがどーやって育ったのかも、ナニをしてきたのかも、どれだけの腕を持ってるのかも!
全部聞きマシタ!」
「うん、その上で?」
「シズクは普通の女のコで!
俺の天使デス!キリッ」
「…
『普通』とはいったい…」
あーらら。
ドヤ顔のアオに、とうとうシズクは呆れちゃったみたい。
溝は深まるばかりじゃねーか。
「アオは夢見がちすぎる」
「違ェし!
コッチが事実だし!」
苦笑混じりのシズクの言葉を、アオはブンブンと首を振って否定した。
そして強く唇を噛んでから、視線を逸らして力なく呟く。
「わかるんだ。
俺も『迅速で確実な任務遂行のために、障害物は全て消せ』って命じられて、その通りにしてきたから。
君が本物の殺戮マシーンだったら、あの日、あの廃墟で、君の視界に入った瞬間、俺は死んでた」
「…」
「君は俺に逢う前から、人の命を奪うことをなんとも思わない機械なんかじゃなかったンだ。
凶暴で強大すぎる力を無理矢理植えつけられて、感情どころか痛覚すら閉ざして自分を機械だと思い込まなきゃ生きていけなかった、ただの可哀想な女のコだったンだよ」
「…」