その嘘に踊れ
へ…
幻聴?
「シズク?
一緒に逃げるって…言った?」
「言った」
幻聴じゃねェェェェェ!?
フラレてなかったぁぁぁぁぁ!?
…
いやいや、浮かれンな。
コレはあくまで『一緒に逃げる』だから。
『好きだよ』に対する返事じゃないから。
うん、そう。
わかってるから。
だって彼女の態度、なんか冷たいもん。
目も合わせないで。
そそくさと離れてっちゃって。
しゃがみこんで、柵の隙間に手を差し入れて…?
「ナニヤッテンノ?」
「荷物を取ってるの。
デイジーやオタが先に来て、見つかったら面倒だから隠してた。
こんな予定じゃなかったから、一人分しか用意してないケド…まぁ、なんとでもなる」
柵の向こう側に吊るしてあったらしい重そうなバックパックを引き上げ、床に下ろしてジッパーを開けたシズクは…
「ハイ」
中に入っていたザイルとカラビナ、そして革手袋をアオに差し出した。
「エレベーターやエントランスの防犯カメラは、たぶんオタが押さえてる。
逃げるなら、コレで、ココから」