その嘘に踊れ
コレで?
ココから?
懸垂下降?
え?今?
「…
えっと…」
「あ、ハーネスないと無理?
なら、私がアオを背負って」
「いやいや、違うから。
そんな軟弱じゃねェから」
「あ、アノールに取っ捕まった人たちなら心配ない。
バンにあったアオのPCで秘密裏に脱出しろってメールしといたから、もうカプセルホテルを抜け出して合流地点で待ってるはず」
「え?そーなの?
ありがとう…って、そーじゃなく…」
じゃあ、ナニ?と首を傾げるシズク。
コレはナニゴト?と首を傾げるアオ。
うん、見事に噛み合ってない。
ようやく目は合ったケドネ!?
よし。
こんな時こそ会話だ、会話。
「シズクは、たった今、俺と一緒に逃げようって決めたンだよね?」
「うん」
「じゃ、なんで既に逃走準備が整ってンの?」
「アオを逃がすなら、今が最大の好機だからに決まってるじゃない」
受け取ったザイルにチラチラと視線を落として訊ねたアオに、シズクはさも当然といった様子で頷きながら答えた。