その嘘に踊れ
「一仕事終えれば誰でも気が緩む。
デイジーほど頭のキレる男でも、それは同じ。
たぶん今頃、アノールと祝杯あげてると思う。
外に出た私と、私を追ってやって来たアオが長話をしていても怪しまれないシチュエーションも整っているから、逃走発覚までの時間も稼げる。
でショ?」
『でショ?』って…
彼女、聡明すぎヤバい。
ペロンと人の行動まで読んじゃって…
いや…
まさか、転がして?
「シズク…
狭い場所が苦手って、嘘じゃない?」
俯いて下唇を指でイジイジと触りながら、アオは上目遣いでシズクを見た。
「どうしてそう思うの?」
「インドア嫌いな人の趣味がジグソーパズルとか…ねェよな?」
「フフ、アオにはバレちゃったか。
ゴキブリが苦手なのは、ほんと。
三億年前から最終形態の究極生命体に勝てるとは思えない。
雷が苦手なのも、ほんと。
インドラの矢にロックオンされて生き残れるとは思えない。
でも、狭い場所が苦手なのは、嘘」
小さく肩を竦めたシズクが、ペロリと可愛い舌を出す。
「いつでも一人で自由に動き出せるように、ずっと前からデイジーたちを騙してた」
「もしかして…
『ならず者』やっちまった頃から?」
「やっちまった頃から。
嘘を隠すなら真実の中、ってね」