その嘘に踊れ
「ね、ね、しーちゃん?」
「ナニ?
あ、その瓦のピース、本丸じゃなくて二の丸」
「ぅ… ハイ‥
ね、しーちゃんのお母さんって、どんな人だった?」
「母は旅行が好きだった。
南米でも中東でも子連れで行っちゃう、アグレッシブなツーリストだった」
「親戚とかは?」
「身寄りはないと聞いてる。
母が死んで私が長期入院しても、誰からも連絡がなかったから、確かだと思う」
「そっかぁ…」
「ほんとは全部調査済みなクセに」
「ナンノコトデショウ?
じゃあね、お父さんは?どんな人?」
「知らない」
「全然?」
「全然」
「恨んでたりとか…する?」
「会ったコトも話したコトもない人を、どーやって恨めと?
父に対して特別な感情はない。
あ、でも、感謝はしてる」
「感謝ぁ?
しーちゃんのお母さんをヤリ捨てした、クズヤローじゃない?」
「私は母じゃないし。
それに今私は、父の援助で生活してるし」