その嘘に踊れ

蝋燭


『ソレっぽい雰囲気』を作る機会は、わりとすぐに訪れた。


「コレ、台風?」


窓を叩く雨の音を聞いて、ベッドに手錠で繋がれた透子が、アオに訊ねた。

激しい風雨でいつにも増して暗く見える夜空を時折照らすのは、稲妻だろうか。

身を屈め、食後の紅茶を慎重に透子に手渡しながら、アオは答える。


「台風は来てないよ。
コレは爆弾低気圧ってヤツだって」


「へー…
アオは一人で洗脳ツールをチェックしてるンだー」


「違う違う、テレビなんて観てナイヨー。
俺のサ○ドエフェクトがそう言ってンだヨー」


「…ぼ○ち食べ過ぎて、油で指がギトギトになればいいのに」


外は大荒れでも、部屋の中は相変わらず…

ピカっ

ゴロゴロ…ドガシャーン

フっ


「ふっひゃぁぁ!?」


「グぇぇっ!?」


ハイ。
そーでもなかったわ。

近くに雷が落ちて。
照明も落ちて。

ティーカップを放り出した透子が、アオの首に腕を回して絞め上げて…

いやいや、ポジティブに解釈しよう。
首が苦しいものの、抱きつかれちゃってるYO!

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