その嘘に踊れ

なんつーか…

ここまでくると、意図的に『地味』を装っているようでもある。
『目立つコト』『特別であるコト』を、徹底的に避けているようでもある。

でもね?

世の中には、自らの努力だけではどーにもならないコトもありまして。
いくら注意していても、青天の霹靂を食らうコトもありまして。

その日、あっと驚く『特別』な出来事が、透子を襲った。

電車を下り、駅から自宅であるマンションまでの道を歩いている途中、突然腕を掴まれて路地に引きずり込まれたのだ。

コンクリートの塀に背中を押しつけられて。
顔の横につかれた大きな両手に、逃げ道を塞がれて。
見上げれば、至近距離に超絶イケメン…

ってコレ、壁ドンじゃん。

透子の目が大きく見開かれる。

イケメンだからか?

彫刻が息をしているようなパーフェクトな面差しに、銀髪&褐色肌とかアンタ、少女漫画から抜け出してきたみたいじゃん。

うん、イケメンだからか。

そのイケメンが、アイスブルーの瞳が隠れるくらい優しげに目を細め、少し厚めのセクシーな唇を開いて、


「ね、このまま俺と一緒においで?」


なんて、腹に響くバリトンボイスで囁いた日にゃ、もう…

お持ち帰りされちゃうか。

普通ならあり得ないケド。
完全に通報レベルだケド。

『ただしイケメンに限る』効果で、『トゥンク』とかいって、お持ち帰りされちゃうか。

この突然降って湧いた、女のコなら誰もが大好物であろうスイーツ(笑)シチュエーションを前に、透子は…

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