その嘘に踊れ
いやいや、待って?
まだ逃してないから。
まだ照明は落ちたままだし、ローソクも残ってるから。
後ちょっとですケドネ!?
よし。
ココから、ココから。
ワンチャンあるよ!
緊張で汗ばんだ手を握りしめ、アオが口を開こうとすると…
「ねェ、アオ。
ちょっと思い出したンだケド」
透子に先を越された。
「ん?
ナニを?」
「芦原家にかけられた、呪いの話」
「へ?」
ナニソレ、呪い?
そろそろスイーツ(笑)したいンだケド。
稲○淳二にはご退場願いたいンだケド。
だが…『芦原家』。
今、透子が置かれている危機的状況は、父親である黒木に起因する可能性が高いと踏んでいたが、コレはひょっとすると…
「へー、どんな話?」
努めてナニゲない調子を装い、アオは続きを促した。
「子供の頃、母に聞いたの。
今じゃ完全に没落してるケド、芦原の家って、昔は結構名家だったンだって。
で、いつからあるのか、どうしてなのか、よくわからないような独特の決まり事があってね?
よくわからないまま、代々守り続けてきたらしいンだケド、それが江戸末期に」