その嘘に踊れ

「ちょ…
江戸って、ちょんまげの?ショーグンの?」


アオは驚いて透子の話を遮った。

けれど彼女は気を悪くした様子もなく…


「うん、その江戸時代。
古い巻物的な家系図なんかもあったって、母は言ってた」


と、サラっとのたまった。

今更調べたワケでもなく、フツーに江戸時代まで遡れる家系図があるとか…

本当に、それなりの家柄かも知れない。

参ったな。
ソコまでは調査しきれてなかった。

ひょんなコトから開示された情報を聞き漏らすまいと、アオは神経を研ぎ澄ます。

もう雨音も聞こえない。

短くなったローソクに照らされた静寂の中、透子の抑揚のない声だけが…


「江戸末期に、芦原家が守ってきた決まり事が破られた。
その決まり事っていうのは…
夜に、ローソクの灯りを切らしてはいけないというコト」


ローソク?
は、どーでもいい情報カナ?

他にナニか、家系に関する…


「でも、寝ちゃうじゃない?
寝ちゃったら、ローソクが切れても気づかないじゃない?
だから芦原家はずっと、屋敷中の短くなったローソクを新しいモノと取り替えて回る下人を雇ってたンだって」


ただローソクを取り替えるためだけに、人を雇っちゃうンだ?

セレブだな、おい。

両替商?鴻池屋的な?

< 62 / 291 >

この作品をシェア

pagetop