その嘘に踊れ
「ちょ…
江戸って、ちょんまげの?ショーグンの?」
アオは驚いて透子の話を遮った。
けれど彼女は気を悪くした様子もなく…
「うん、その江戸時代。
古い巻物的な家系図なんかもあったって、母は言ってた」
と、サラっとのたまった。
今更調べたワケでもなく、フツーに江戸時代まで遡れる家系図があるとか…
本当に、それなりの家柄かも知れない。
参ったな。
ソコまでは調査しきれてなかった。
ひょんなコトから開示された情報を聞き漏らすまいと、アオは神経を研ぎ澄ます。
もう雨音も聞こえない。
短くなったローソクに照らされた静寂の中、透子の抑揚のない声だけが…
「江戸末期に、芦原家が守ってきた決まり事が破られた。
その決まり事っていうのは…
夜に、ローソクの灯りを切らしてはいけないというコト」
ローソク?
は、どーでもいい情報カナ?
他にナニか、家系に関する…
「でも、寝ちゃうじゃない?
寝ちゃったら、ローソクが切れても気づかないじゃない?
だから芦原家はずっと、屋敷中の短くなったローソクを新しいモノと取り替えて回る下人を雇ってたンだって」
ただローソクを取り替えるためだけに、人を雇っちゃうンだ?
セレブだな、おい。
両替商?鴻池屋的な?