その嘘に踊れ

情報収集どころか本来の目的すら忘れて『本当にあった怖い話』に聞き入っていたアオは、口の端をヒクヒクさせた挙げ句の半笑いという、なんとも珍妙な表情で膝に乗っかる透子を見つめた。

その顔、もはやイケメンではない。


「あ…はは?
実話じゃないンでショ?
だってしーちゃん、寝る時いつも、電気消してるもんね?」


「『電気』だからね。
よくわかンないケド、暗闇じゃなくて、暗闇を照らしていた『ローソク』が消えるって事象が、スイッチなンじゃない?
真偽はともかく、電力の恩恵を受けてる現代じゃ、発動しようのない呪いだよね」


なんて、やはり透子は淡々と答えるが…

ちょっと待って?
ちょっと待って?

それじゃ、今この状況は、どーなの?

夜で。
電気は落ちてて。
ローソクはまさに尽きかけてて。

しかも、雨まで降ってやがりマスYO!

いやいや?
信じてませんケドネ?
1㍉もコワくありませんケドネ?

まぁ、アレだ。
そのー… そう、不便だから。

新しいローソクに火を点けておこうカナ…


「しーちゃん、ちょっと待っててネ」


そう言って膝から透子を降ろしたアオが、立ち上がった瞬間…

フっ

ローソクの炎が、消えた。

え?まじ?
ナニ?このバッドタイミング。

だが、次の瞬間には…

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