その嘘に踊れ
泣き虫
散々な目に遭った。
ものの見事に騙された。
『嘘ついちゃいけません』って、子供の頃に教わらなかったのぉぉぉぉぉ!?
…
ハイ、おまえが言うな、と。
ご尤も。
だが、なんとかしなきゃならない。
ヘタレ認定だけは、撤回してもらわなきゃならない。
ヘタレのまま
『あのキスはなんだったの?』
『俺のコト、ちょっとは好き?』
なんて、イイ顔して聞いたところで、
『ヘタレはナイわー』
と鼻で笑われて終わるに決まってる。
イ──ヤ──す──ぎ──るぅぅぅぅぅ!?
今こそ、男らしさを発揮するンだ。
そう。
彼女に植えつけられた『アオ=ヘタレ』がフっ飛ぶような、雄の魅力を。
でも…
いったいどーやって?
筋肉…は、なんか違うし。
ヒゲ…も、なんか違うし。
ちょっと強引なアプローチっつーのも…
ハイ、拉致監禁までしといて、コレ以上何をどう強引にって話デスヨネ。
再びご尤も。
どーやって男らしさを…
どーやって男らしさを…
どーやって男らしさを‥‥‥
ん?待て待て?
そもそも、男らしさってナンナンダ?
考えれば考えるほど、思考が迷子。
透子の足錠が外されるバスタイム中、アオは一人キッチンで夕飯の後片付けをしながら、物憂げに息をついた。