その嘘に踊れ
ゴスっ
「グフっ!?」
イケメンのみぞおちに、拳を叩き込んだ。
壁ドンかーらーのー、腹パンて。
野いちごでコレは許されるのか?
そんなはなだの心配などお構いナシに、透子は腹を押さえるイケメンを突き飛ばして逃げ出した。
歩き慣れた、閑静な住宅街の通りに戻り、自宅マンションまで猛ダッシュ。
肩越しにチラリと振り返るが、男が追ってくる様子はない。
もう大丈夫?
だけど、念の為…
マンションの手前で走る速度を緩めた透子は、スクールバッグのポケットからあまり使われていない様子のキレイなスマホを取り出した。
その途端。
手を、スマホごと強く握られる。
背後から羽交い締めにされる。
ついでに、首にナニカを突き刺される。
ナニコレ?
なんとか眼球だけを動かして見上げれば、痛みを堪えるように眉を寄せた、さっきのイケメン…
「ごめん。
こんな手荒な真似はしたくなかったンだケド…
ほんとにごめん」
瞼が重い。
イイ声の謝罪を子守唄代わりに聴きながら睫毛を伏せた透子は、イケメンに全体重を預けた。
『特別』どころか、犯罪デスネ。
イケメンが用意していたらしい特徴のない白いバンに押し込められる、透子の華奢な身体。
彼女が手にしていたスマホは、当然のようにバッテリーを抜かれ、スクールバッグのポケットにリターンした。