その嘘に踊れ

「歯磨き粉なんかはソッチだケド、ボトル物のストックはコッチ…」


中に入ってしゃがみ込んだアオは、洗面台の下にある収納棚の扉を開けた。

バリトンボイスにいつものハリがないケド。

気にしないで。
てか、ツッコまないで。


「うん、わかった。
ありがとう」


「どーいたしまして。
リンスもボディソープもあるから、どれでも好きに使ってくれて」


ぽふん…

『イイからね』
そう言い終わる前に。

振り返って透子を見上げようとしたアオの顔面が、ささやかだが柔らかいナニカに衝突した。

ナニ?コレ。

白い…シルク?
あ、ワンピースのドレープか。

そのちょっと上には、細い鎖骨が浮き出たデコルテがあって…




(ココでまさかのラッキースケベぇぇぇ!!??)


ソーデス。

『一緒に収納棚の中身を確認しようと身を屈めていた透子の胸に、振り向いたアオがダイブ』というラッキースケベが発生しマシタ☆

盛大に狼狽え、目の前にある控えめすぎる胸から遠ざかろうと、後退るものの…

ソコはもう、狭い洗面所ですから。

背中を思い切り洗面台にブツけたアオは、床にペタンと尻もちをついた。

ちょ…存在したよ、ラッキースケベ!?
コレが現実なのかぁぁぁぁぁ!!??

< 71 / 291 >

この作品をシェア

pagetop