その嘘に踊れ

「しーちゃん!ダメ!」


顔面蒼白で叫んだアオは、透子よりも先に鍵束を拾おうと、ベッドに身を乗り出した。

が、焦ったせいで、透子が床に落としていたタオルに気づけず、見事踏んづけて足を滑らせてしまい…


「わっ!?」


「わっ!?」


ボフっ

ベッドに倒れ込んでしまった。

それも、一人で、ではなく。
透子を巻き添えにして。

ってコレ、床ドンじゃん。

鍵を取ろうと背を向けたトコロを押し倒したワケだから、うつ伏せの透子の上に、アオが覆い被さっているというカタチだが。

床ドン…

いや、ベッドドン!?

アオの目が大きく見開かれる。
耳まで真っ赤になる。
ついでに、あり得ない速度でビートを刻みだした心臓が、口から飛び出しそうになる。

だってコレもう、アレだよ。

風呂上がりでイイ匂いのする女のコをベッドドンとか、アレだよ。

スイーツ(笑)シチュエーションなんて言ってらンない、アレ直前のアレですYO─────!!

なんて日だ!?

ラッキースケベに振り回されて。
貧乳女子の呪いにブっ飛ばされて。
オトナ彼女に純情を弄ばれて。
囚人脱走の危機に青ざめて…

で、行き着いた先はベッドドンか。

あぁ、ロマンスの神様!

ちょっとはペース配分考えてくンなきゃ、身が持たねェよ!!

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