その嘘に踊れ
「違っごめっ違っ鍵っはゎっわわわ///」
周章狼狽、まさにソレ。
アオは慌てふためいて意味不明語を喚きつつ、なんとかベッドに肘をついて、ソープが香る透子の背中から身を離した。
すると、この突然降りかかったアレ直前のアレシチュエーションを前に、モゾモゾと自由になった手を動かした透子は…
ゴっ
「アガっ!?」
青くなったり赤くなったりと忙しいアオの顔面に、握った拳の甲を叩きつけた。
ベッドドンかーらーのー、裏拳て。
だがコレは、正当防衛だろう。
アレ直前のアレなんて、『ただしイケメンに限る』でも流されていいモノではない。
謝れ、アオ。
たとえ裏拳食らっても、おまえが謝れ。
「ぅぅ…ご…ごめん、しーちゃん…
でも、コレも事故なンだよぉぉぉ…」
言い訳はメメシーが、まぁ、良しとしよう。
「うん、知ってる。
私が床に置いたタオルで滑ったンでショ?
知ってたケド、急に距離が近くてビックリしちゃって。
コッチこそ、ごめん」
あら、寛大。
そして冷静。
暴力的だがオトナ対応を見せた透子が身を起こし、改めて鍵束に向かって手を伸ばす。
ベッドから落っこち、ダメージを受けた鼻を手で押さえるアオには、もうそれを止めるすべはない。
凍りつきながら、ただ見つめているだけ。
小さな形のいい爪に飾られた美しい指先が、二つの鍵を繋ぐリングをつまみ上げた。