その嘘に踊れ
まぁ、実際浮かれてますケドネ、ハイ。
『部屋に閉じ込めたまま、しーちゃんに水着や浴衣を着てもらう、いい方法はないものか』
なーんて考えちゃったりもしてますからネ、ハイ。
色々と悩みは尽きないながらも、アオはいそいそとマンションに帰ってきた。
今日はスイカ。
一緒にスイカ。
なんて、ニマニマしながらエレベーターに乗って。
そーだ、部屋で水着でスイカ割り…は、無理があるか。
なんて、眉をハの字にして。
一人で百面相に挑戦するキモチ悪い人になっていたアオは、玄関扉に鍵を差し込もうとして…
全ての表情を消した。
開いている…
表情どころか足音も気配も、その存在までもを消失させて、アオは素早く部屋に忍び込む。
元々ナニもないリビングに異常はなさそうだが、システムキッチンの棚という棚が全て開いている。
おまけに寝室の扉も開いていて、中からは複数の声が…
あぁ…
もう冷静じゃいられない。
「しーちゃん!!」
アオは悲鳴にも似た声で叫び、寝室に飛び込んだ。
そして、見た。
ベッドに蹲り、小さくもがく透子を。
その透子の上に、まるで動きを封じるように覆い被さる、大柄な金髪男を。
割れた窓ガラスの前に立って手にしたナニカを振り上げる、ヒョロい黒髪男を。
冷静じゃいられないどころの話じゃねーよ、コレ。