その嘘に踊れ

「ごめんね、しーちゃん。
ちゃんとシュー買っとくから。
しーちゃんの手が届くトコロに置いとくから」


アオはそう言って、ベッドに座る透子を抱き上げた。
すると彼女はグスンと鼻をすすりながら、首に細い腕を巻きつけてくる。


「うん…
そしたらね?そしたらアイツら…
一匹残らず駆逐してやるぅぅぅ…」


「火星探索が壁外調査に変わってっし…
全く、負けず嫌いなンだから。
とりあえず紅茶飲んで落ち着こっか?
いつもより砂糖多めで、ね?」


「うん…」


透子が顔を上げ、目元を赤くしながらも微笑む。
それを見たアオも、ホっとしたように唇を綻ばせる。

めくるめく二人の世界…


「めでたしめでたし、だわね!
じゃ、不法侵入の件も窓ガラス破損の件も、不問ってコトで!」


ハイ、めくるめいてませんネ。

パンっと両手を打ち鳴らした金髪男が、にこやかに笑いながらのたまった。

うん、不問でイイからさ。
帰ってくンね?

透子を抱きしめたまま、アオは冷めた眼差しで二人の侵入者を一瞥する。

空気読め。

けれど、アオの心中を知ってか知らずか金髪は…


「アタシは紅茶よりコーヒーがイイわ。
ブラックでお願いネ☆」


厚かましくも、居座る宣言しやがりマシタYO!

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