その嘘に踊れ
残るもう一部屋にも、ナニもナイの?
てか、透子はどーしちゃったの?
まさかソコにある調理器具で、プロ並みの腕前で料理して食べちゃったンスか!?レ○ター博士!?
ハイ、見ればわかるよ。
レバーハンドルに手をかけて寝室のドアを開ければ、クイーンサイズのクラシカルなアイアンベッドがあった。
だが、ソレだけ。
やはり他にはナニもナイ。
そしてその柔らかそうなマットレスの上には、透子が横たわって…
横たわって…
ませんネ、ハイ。
起きてるよ。
ナゼか髪を短くして。
ナゼかキャミソールタイプの白いワンピース姿になって。
ナゼか細い右手首とベッドヘッドの頑丈そうなポールとを、手錠で繋がれて。
暗い部屋の中で、きちんと両足を揃えてベッドに腰掛けてやがるよ。
え?
ナンデ?
イケメンが、形のいい眉をピクリと動かす。
諸々の『ナゼ』には、心当たりがある。
全部自分の仕業ですから。
でも、ナンデ起きてンの?
まだ眠ってる時間でショ?
クスリの量を間違えたか?
いやいや、そんなハズは…
暗闇に光る目でジっと見つめられているコトに気づき、何はともあれイケメンは微笑んだ。
疑問は後回しだ。
と言うより、結果オーライだ。
逃げ出そうと暴れて、手錠で手首を傷つけた様子はないし、白く滑らかな頬にだって、涙の跡はないのだから。