その嘘に踊れ
「あぁ」
…
あれ?
返事?
アオくんてば、返事しちゃったの?
じゃコレ、会話なンだ?
たまたま隣に居合わせただけに見える接点のなさそうな二人の、奇妙な会話は続く。
「調査対象1。
本名、カルロス ミラー、28才。
国籍はアメリカ。
新宿の『club N』、実質ゲイバーに5年前より勤務」
「情報元は?」
「クラブの40才代女性経営者。
入国管理局局員を装って接触、就労ビザ、雇用契約書を確認」
「あぁ」
「調査対象2。
本名、李 静、21才。
W大学3年の中国人留学生。
コチラの情報は、W大学学生課のPCに侵入して取得。
ただ、昨年からの成績及び出席率低下の原因は未確認。
時間を貰えれば、掘り下げて再調査を」
「不要。
関係なさそうだ」
アオがビジネスマンの言葉を遮る。
やはり周囲には聞こえないほどの小声で。
視線を前に向けたまま。
ある程度察しはつく。
調査対象1はデイジー、2はオタくんだろう。
でもってオタくんがあまり大学に行かなくなった理由は、世界に名高い日本のオタク文化にどっぷりハマってしまったからだろう。