白い嘘
私の顔を見て、どこか寂しそうに微笑む。


景色が滲んでも、それでも蒼真の顔は綺麗で。


「よかった。嫌われたと思ってたからさ。」


……え?


切なそうに目を細める蒼真は、また前を見て、歩き出す。


蒼真は、あの事を言っているのだろうか。


分からない。


「え?なんで?」


私は、その言葉に驚いて暫く立ち止まったままで。


気づいたら、蒼真は居なくなってて。


目をごしごしと擦る。


何時の間にか歩道橋を渡りきってた。


私の方を、見つめていた。


「………いやさ、勝手に向こうに行ったからさ。怒ってるかと思ってた。」


蒼真は頭をかきむしってる。


それは、言葉を探してるように見えた。


…それ、蒼真が困ったときにする癖なんだよね。


遠くからでも蒼真がどんな顔をしているかが想像できて。


「怒ってる……」


ポロリと出た本音は明るく群れるライトたちに消される。


歩を蒼真の元に進める。


相変わらずの笑顔が私を待ってて。


「……怒ってないよ」


「…なら、よかった。」


ライトが私たちを照らした。

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