白い嘘
それに、また心臓が反応して‥‥。


でも、蒼真といると落ち着く。


全部を託せる。


そんな風に思うことがある。


蒼真には、そう言う笑顔がある。


「ううん、何もできなくてごめんね。」


私は、首をふる。


「いや、美歩にはいっぱいしてもらったよ。」


ニコリと微笑む蒼真は、やっぱり咲子さんに似ている。


蒼真のお母さん、咲子さんは、クッキーを焼くのが上手で何時も家に来たら焼いてくれた。


私は、それが大好きでほぼ毎日遊びに行ってた。


それが、私が小学生になった始めの方に咲子さんは急にクッキーを焼いてくれなくなった。


『なんで?クッキー焼いてよー。』


小さい頃の私は、何度も咲子さんにお願いをしたけど。


『……ごめんね、ごめんね』


毎回そう言って、私を困ったようになだめていた。


あの頃から


咲子さんの体はどんどん弱くなっていってた。


私は、それに気付かなかった。


会うたびに、喋る回数も減って。


腕が細くなっていってたのに。


遂には、咲子さんは部屋から出て来なかった。


『……………………おばさん?』


ある春の始め。

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