白い嘘

静かに

「……」


独りでいることが慣れてきたのは、いつからだろうか。


遠くで物理の先生の声がする。


隅っこでこうやって空を見上げてるのが、日常になったのは。


何か面白いことがあったのか、一斉に笑い声がおこる。


今日も明るく輝く空は私には、眩しすぎて。


目を細める。


一羽の真っ白な鳥が雲一つもない空を泳ぐように横切る。


「……」


まだ、騒がしい教室。


教室の外も何処からか聞こえてくる蝉の声が鳴っている。


何故、私は忘れられないんだろう。


彼のことも


あの日のことも


あの夕焼けのことも。


友達と騒ぎあって、笑って、泣いて。


あの日から、私は変わった。


もう、戻れない。


普通になりたい。


前みたいに、何にも捕らわれずに過ごしたい。


その願いはきっと、叶わない。


ここは、私だけが色を持たない世界。


キーンコーンカーンコーン


軽やかなチャイムの音が響く。


「きりーつ、きおつけー、れい」


やる気が感じられない委員長の声と共に皆が同じ動作をする。


私も、浅く礼をする。

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