白い嘘

「‥美歩!」


私の名前を呼んでいるその声が蒼真のだとすぐ分かる。


振り返ると、やっぱり蒼真がこっちに駆け寄って来てた。


「どうしたの?こんな時間に。学校は?」


ハァハァと荒い息づかいの間で言葉を出していってる。


「あ、えっと‥」


結局あの後は5時間目をサボってしまった。


6時間目の始めの方に教室に入ってきた私を見て皆が驚いた顔をしてた。


先生も焦った顔とタバコの匂いを連れて私に近づいてきた。


案の定、私はあの埃で鼻をやられてしまっていた。


それで、何も聞かれずに帰されてしまった。


「‥‥いや、なんでもないよ。」


心配させたくなかったから、言葉を濁す。


「もしかして、風?大丈夫??」


おどおどした声で私を見つめてくる。


それがなんか、


かわいい……


胸にキュウっと心地よい痛みがある。


「違うよー。」


ほんとに、違うよ。


それでも心配する蒼真に笑いが出てしまった。


「あ、笑ったな。このやろー。」


追いかけてくる蒼真。


負けじと逃げるけど、すぐに捕まる。


「捕まえたー。」


手をキュッと握られる。


ドキン


その笑顔に、胸が高鳴る。


かってに、言葉が漏れて。


「好き…」


そしたら、驚いた顔をして。


「俺も。」


二人の影が重なる。


蒼真、好き


この時間がずっと続きますように。


心の中で呟く。

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