白い嘘
「あ、良いところ有りますよ?」


後ろにグイッと腕を引かれる。


「えっ?」


体勢が崩れる。


後ろに倒れそうになる。


お腹にフワッとした気持ち悪い感覚がおこる。


「わっ…」


怖さで目を閉じたら、ポフッと暖かさに包まれた。


一瞬、ペンキのような鼻にくる匂いと優しいお弁当の匂いがした。


「あ、ごめん、ごめん。」


見上げると光に当たった髪が見えた。


それは、キラキラとしていて、陽だまりを連想させた。


「………は、はい。」


わたしは、その人の腕から離れる。


耳元でお弁当が入った袋がカサカサなる。


「じゃあ、行きますか?」


何処か楽しそうな笑顔に私は、何も言えずついって行った。

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