白い嘘
「……あの、」


勇気を振り絞り、さっきからずっと思っていた言葉をもう一度頭の中でなぞる。


ずっとこの人に付いて来ちゃったけど、果たして大丈夫なのだろうか。


本来なら通ってはいけない場所を通ってるから。


階段をドンドン上がっていく。


前の人が速すぎて、追い付けない。


胸の方がジンジンする。


息が苦しい。


「はい。」


前を歩いていたその人の足が止まる。


息を整えて


大丈夫だから


「………………えっと、何処に行くんですか?」


久しぶりに蒼真以外の人と話すかも…


その人は笑って。


「うーんとね。秘密だね。」


何かをたくらんでいるような悪い笑顔だった。


「ぇ……」


驚いている私を笑ながら、また階段を上り始めた。


「ていっても、もうちょっとで着くよー。あと、もうちょいの辛抱。」


そう言って進む。


さっきよりかペースがゆっくりだ。


思えば、ここはA棟の一番隅の一番上。


資料室みたいなのがある近くだ。


ゆっくりだからか、周りが良く見える。


「はい、とーちゃく。」


表札がなく、何も書いていない教室。

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