ノイジーマイノリティー
その日の相棒は
ピアノの人だった
ちょっと年配の男性
白髪の方が多い髪が
ダンディな人だ
家族もある
仕事もある
けれど
音楽が出来るだけで
幸せそうだった
人柄は
音に現れる
彼のピアノは
いつもとても
暖かく優しい
本番の始まる前の楽屋
俺は彼と二人で
出番を待っていた
機嫌の良くない俺に
彼が
声をかけてくれた
「なんだか元気ないなぁ
大丈夫かい?」
俺は曖昧に笑う。
そして
指の運びを確認した。
「今日は彼女は来ないんだ
残念だね」
俺の指が一瞬止まった
彼が笑った
俺は気にしてないと
自分に言い聞かす
「俺のかみさんも
今夜は仕事だよ、子供もいるしね」
俺は愛果にすごく逢いたくなった
今頃何をしてるんだろう
触れたいのは彼女だけた
「仕方がないって
わかってるんだ。
こうして好きなこと出来るのは
彼女のお陰だからね。」
俺は彼の話を静かに聞いた
「だから、俺はいつも
彼女の為に演奏することに
決めたんだ。
彼女がここにいなくてもね。
いない時は特にかな」
そう言って笑った
俺は彼の顔を見た
穏やかな笑顔と
優しい瞳
何かに気づいて
俺の後に視線を移す
「そろそろ出番みたいだ
今夜は一緒に
彼女のために頑張ってみないかい」
そうイタズラっぽく笑った
俺もつられて笑う。