ノイジーマイノリティー



正直


生活は名古屋にいた時とあまり変わらない



あ、電車に乗る回数が増えた



名鉄って案外便利なんだと思った



駅で移動しなくても



電車がやってくるから




けれど本数は東京の方が多く



行き先も多かった




車なんてなくても大丈夫だ



その分



なんだか空を見ることがなくなった



ビルの間から見える空は




とても狭く小さい



その分、いつもどこかで何かがある



東京




何かを探して見つけて



その繰返し



いつの間にか夜がやってくる



そんな感じだった




河原でサックスを鳴らして時が


時々


無性に懐かしくなる



流れる雲



刻々と色の変わる夕空



空を飛ぶカラスの群れ



音が空に消えていくあの瞬間




俺と



あの空間には



不純なものの一切ない



一体感があった



一瞬の様な



永遠の様な



その瞬間に



愛果に出逢った




愛果は




以前からお店に一人でやってきた




いつもという訳ではない



たいがい月末




給料が出た後だと思う



始めて来た時



なんだか元気がなかった



パームビーチの様な店は



初めてのだったんじゃないかな



俺より



少し年上



真面目な会社員風



そんな感じだった




ドキドキしながら



料理を注文




ちょうどライブの始まる前だったから



辺りを伺いながら




食べてた



なんだ少し居心地悪そうで



心配だった



ところが




演奏が始まった途端




手を動かすのを止め




演奏に夢中になった



その横顔が忘れられなかった





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