ノイジーマイノリティー


何も言わなくても



君は



俺の笑顔を見ると



また



嬉しそうに微笑んだ



そして



握った手をそっと



握り返す



風が君の髪を揺らす



君は



顔にかかる髪を




もう片方の手で押さえようとする



そしてまた



のん気に話を始めた



今度は会社の先輩の話だ



しかも男の先輩



俺の胸は



君に触れられた



嬉しさで



自然と笑みがこぼれ落ちる



そんな気持ちと



こんな時に



のん気な彼女の口から



出てきた男の名前



俺は



少し意地悪になる



君にも同じ気持ちでいて欲しくて



確かめてみたくなる



君が夢中で話してるのに



俺は憮然として



少し意地悪な返事を返した



多分



ふーん、それで



みたいな感じだった



馬鹿な俺



その返事で君は



話を止めた



「ごめん、つまらなかったね」



そう言って笑う。



俺は素直じゃないから



君の顔を見なかった



「そうだよね、知らない人の話



聞いたってつまんないよね



ごめんね」



そう言って俺の方を見た



彼女は素直だ



だから


人を疑うことをしない



本当に俺が


君の話を嫌がっていると



思っているのだ



本気で申し訳なく思っている



チラリと彼女を見ると



もう彼女は泣きそうに



なっていた



びっくりする俺



慌てて



今度は俺が話かけた





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