蜂蜜ワルツ
下駄箱でローファーを履き、待っていてくれてる服部くんに小走りで駆け寄る。
「……、っ」
「……」
わたしが来たのをちらりと見ると、何も言わずに歩き出してしまう。
まるで、自分の前の走者が定位置まで来たら出発する、リレーのようだと思う。
こんなのだからミホちゃんに、付き合ってるように見えないとか言われちゃうんだろうか。
でも、だからといって、どうしたらいいのか分からないし、いきなりミホちゃんや古都ちゃんみたいに振る舞うこともできないし。
わたしはただ、服部くんの左斜め後ろを歩くだけ。
目の下の泣きぼくろがたまに見えるたび、無性に心拍数が上がる。
それだけだと、付き合ってることにはならないのかな。
アスファルトの上に伸びる二つの影は交わって、一つの影になっているのに。
わたしたちの距離は遠い。