蜂蜜ワルツ
この一ヶ月、これが普通だと思って過ごしてきたけど。
よくよく考えてみたら、すごく寂しい。
……うん、寂しい。
寂しいよ、服部くん。
ぴたり、足を止めた。
ぎゅっと鞄の持ち手を握り締める。
「……石川?」
俯いたままでいると、低い声が降ってきた。
でも、上手く言葉に出来そうになくて。
どうしよう、どうしよう、と思っているうちに、どんどん沈黙が長くなっていく。
チリンチリン、と自転車に乗ったおばさんがベルを鳴らして通り過ぎていった。
犬の散歩をしているおじさんが、ちらちらとこっちを見ている。
「……なに?」
ぶっきらぼうに響いたその声が合図だったかのように、口が動き出した。
「さ、……寂しい、です」